退職代行サービスがメディアやSNSによって認知されるようになり、退職代行サービスの利用者は年々増えています。
退職代行サービスが会社を辞める方法として知られるようになり、企業側も柔軟に対応されるケースが増えている一方で、企業の中には退職代行サービスや退職代行サービスを利用した従業員への対応方法を間違えたことでトラブルになってしまったケースを聞くことも増えました。
「自分で退職したいと言えないなんて社会人のクズだ」
退職代行サービスへの対応に失敗した担当者は上記のような考えに終始したことで退職トラブルに発展してしまったようです。
この記事では、そういった誤解を少しでも取り除くべく、退職代行サービスを使う理由や実際に当協会に相談があった失敗事例、企業側が失敗しないための注意すべきポイントについて説明しますので、今後失敗しないためにも参考にしていただければと思います。
クズじゃない。退職代行サービスを使う理由について
厚生労働省が掲示している「令和4年度の年間暫定値」において、勤務問題が原因で自殺された方が3,018人に上り、令和元年の1,949人と比べて約155%に増加しています。
(参考:自殺の統計・各年の状況)
退職代行サービスとは一見関係ない話題かもしれませんが、実は密接に関係したデータなのです。
会社内でトラブルが発生し、勤務問題が増加すれば退職を検討する方が増えます。それに比例して退職代行サービスを利用する方も増えるのです。ここでいう勤務問題は、職場の人間関係、地位や役割などの職場環境、仕事への疲れ、雇用トラブル、仕事のミス、ノルマへの重責などを指します。
社内トラブルや勤務問題が無ければ退職することもありませんし、退職代行サービスを使用することもないかもしれませんが、実際にトラブルは起きていて、その苦悩がきっかけで命を落とされているのです。
退職代行サービスを利用しようと考えた理由は人それぞれですが、周りの人間がその理由を理解するのはなかなか難しいものです。
「退職トラブルになったり、クズなどと言われ怒られたりするのが不安」
「心身ともに疲れてしまい、退職の話をするのも辛い」
上記の退職代行サービスを利用しようと考えた理由に対して
「急に退職するんだから怒られる場合もある」
「すぐ終わる話なんだから会って話をすれば良い」
と考える担当者の方もいるでしょう。
しかし、当人が抱えている恐怖心や不安、疲れなどは周りが考えているより何倍も大きいものかもしれません。
クズなどと言い放たず、相手が退職代行サービスであっても話を聞く姿勢を持つことが大事です。
退職代行サービスを利用した理由が勤務問題や大きなトラブルであった場合、退職希望者をクズなどと言っている場合ではないかもしれません。
トラブル続出?企業側の失敗してしまった対応事例
退職希望者の心情を考慮しなかったことで退職希望者とトラブルになってしまった。退職代行サービスへの対応を失敗しないためにはどうすればいいか、といった問い合わせが当協会にも寄せられています。
今回はその中から退職代行サービスへの対応を失敗してしまった事例を紹介します。
失敗事例①:退職を認めない
従業員から退職の申し入れを受けたが、その従業員は入社して1カ月弱ということもあり社長と相談して退職するにはまだ早いとの結論から退職することを認めないことにしました。
しかし、その判断が失敗だったのか次の日には退職代行サービスから連絡があり、退職の意思が固く、その日からもう出社しないとの内容でした。
社長は大激怒です。失敗に輪をかけるように退職代行サービスからの連絡も拒否するよう指示がありました。該当の従業員に連絡しても反応は無し。しばらく時間が経った頃に労働基準監督署からも連絡があり、会社内はパニックです。
退職を認めないと決めたことで様々なトラブルに発展してしまい、時間も労力も大幅に使うことになりました。
社員からの信用も失ってしまったようで離職率が上がってしまいました。
失敗事例②:従業員に対して圧力をかける
退職代行サービスから連絡があり、自分で退職すると言えないクズ社員に一言いわないと気が済まないと思い、本人が会社側からの連絡は受け付けない旨は聞いていましたが電話やメールをすることにしました。この考えが失敗のもとです。
従業員からは会社から圧力をかけられている、嫌がらせを受けていると捉えてしまったようですが、
こちらとしては一言もそうですが叱咤激励のつもりでした。それが伝わらなかったようです。
上席者から退職希望の従業員に圧力を加えるとは何事かと叱責され、自分がクズな対応をしたことを思い知りました。叱責を受けた後、日本退職代行協会からのアドバイスもあり、退職代行サービスへ連絡をして無事にトラブルを解決することができました。
失敗事例③:有給休暇の消化や要望を認めない
自分自身が退職するのに退職代行サービスを使うことに理解ができず、部下が依頼した退職代行サービスからの話は認められない、要望は自分から伝えるまで認めないと返答しました。
ただ、後になって知ったのですが労働法において有給消化などを認めないことはトラブルになると社長から大目玉を食らいました。
上司と一緒に退職代行サービスへ対応することになり、自分の対応が失敗であったことを痛感しています。まずは部下の気持ちを汲み取ることができなかったことが失敗だと思いました。
企業側が失敗しないための注意すべきポイント
まず一番に注意しなければいけないのは、
「退職を認めないことは法律上、トラブルになる可能性が高い」
ということです。民法では以下の内容が記されており、十分に把握しておく必要があります。
第六百二十六条 雇用の期間が五年を超え、又はその終期が不確定であるときは、当事者の一方は、五年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。
2 前項の規定により契約の解除をしようとする者は、それが使用者であるときは三箇月前、労働者であるときは二週間前に、その予告をしなければならない。※出典:民法(e-Gov法令検索)
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。※出典:民法(e-Gov法令検索)
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
2 期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。
※出典:民法(e-Gov法令検索)
次に失敗しないために必要なことは退職代サービスからの連絡は一旦受けるべきだということです。
退職代行サービスからの連絡内容には、退職の意思だけではなく、退職理由や退職に伴う要望が含まれています。退職をスムーズに進めるために必要な情報を事前に収集していることから、手続きも潤滑に進めることができるメリットがあります。
逆に拒否をしてしまうと時間や労力だけでなく、トラブルになったことが社内に知れ渡り、会社としての価値を下げることにもなり得ます。
最後に、退職代行サービスを利用した従業員の気持ちを汲んであげるということです。
どのような理由にしろ、自分自身で話を進めることができないほど心に余裕が無い状態である可能性が高いからです。
対応を失敗したことでトラブルになるどころか最悪の事態が訪れてしまう場合もあるため、十分に注意しなければいけないポイントでもあります。
まとめ
ある日、突然に退職代行サービスから連絡があれば対応に困ったり、失敗したりすることはあるかもしれない。しかし、本記事に記載したポイントをおさえておけば失敗することは無いでしょう。
また、退職代行サービスを使った事例を参考にしたい。失敗しないために退職代行サービスを利用した人の声を聞いてみたいという方は下記の退職代行サービスと口コミランキングサイトを参照することをおすすめします。
上記の退職代行サービスは当協会の特級認定会員であり、ホームページ上に退職代行サービスを利用した方の事例が掲載されていますので参考になるはずです。
退職代行サービスの生の声を知りたい方は口コミランキングサイトがおすすめです。
当協会の賛助会員で退職代行サービス利用者の成功事例、失敗事例を口コミで見ることができます。
この機会に様々な情報を収集してはいかがでしょうか。
退職代行サービスを利用する理由に少しでも触れることで、退職希望者の気持ちを理解することができるはずです。
少なくとも、退職代行サービスを使うことがクズだと思わないでいただければ幸いです。